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NATOの東方拡大
 新しい、ダイナミックな『可変翼』NATOへ

外交時報第1346号(98年3月)

要旨
NATO拡大はチェッコ、ハンガリーとポーランドの加盟問題だけに気を取られていては全体を見失う。しかし、一足飛びにEAPCをただ見据えてみても、NATOの東方拡大は見えてこない。44カ国もの参加国を有し、北米とユーラシアにまたがる、茫洋として漠たる巨大な枠組みが存在するだけである。

NATO拡大の経過を整理を試みて観察できたのは、NATOとEAPCの間を埋めるかの如く形成されつつある、新しい、ダイナミックな「可変翼」構造であった。本稿では、(1)NATO16カ国、(2)99年の新規加盟が見込まれる三カ国、(3)今次加盟交渉に招請されなかったがNATO加盟の意向を示している他の九カ国を含むPARP参加一八カ国(第三条NATOグループ)、(4)「活発な」PFP参加国による「第四条NATOグループ」及びこれらを全て含んだ外縁に(5)EAPC44カ国(非五条任務NATOグループ)を位置づけ、NATOを中心とする欧州安保構造の多重構造を整理した。また、NATO・露関係、NATO・ウクライナ関係にも注意を払わなければならないだろう。本稿では、このような構造を欧州統合研究で用いられる「可変翼」概念を援用して説明した。

以上により、NATOとEAPCの間の広大な格差を埋める、段階的な枠組みを描き出すことを試みた。NATOの東方拡大は新規加盟国の問題だけでなく、NATOがそう呼びならわす「外部適合」との言葉通りの包括的なパッケージであり、メンバーシップを伴う地理的拡大ではないが、北大西洋条約の各条項に規定された集団防衛以外の諸機能の非加盟国への適用という、機能的拡大であったとの見方を示すに至った。

更に、このような構造は、パートナー諸国にNATO加盟の可能性を残し続けることによって、ダイナミックな性格を有している。すなわち、パートナー諸国側がNATO加盟、あるいはNATOとの関係強化というモチベーションを有していることにより、そしてそのモチベーションの程度によって、NATOとの関係がダイナミックに構築されているのである。(以上862文字)

論文細目次

一 序章
はじめに
NATO拡大の理想と現実
二 NATO拡大の経過概要
加盟交渉被招請国決定まで
NACC及びPFP
「拡大」報告書と個別集中対話
NATO・露関係
新規加盟交渉被招請国決定以降
NATO加盟交渉と加盟費用分担問題
EAPC創設
EAPCの構造
三 NATO拡大としてのEAPC?
「第三条NATOグループ」への道:PARP
「第四条NATOグループ」:PFP
「非五条任務NATOグループ」:EAPC /PFP
ダイナミックな「可変翼」NATOへ
四 結論

主要一次資料
Partnarship for Peace Framework Document, 1994.
Areas for Pursuance of a Broad, Enhanced NATO/Russia Dialogue and Cooperation, 1995.
Study on NATO Enlargement, 1995.

論文中挿入図

英文レジュメもあります。

created on 27 feb. 2000
last modified: le 27 fev. 2000

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