Les Guignol d'Info

人をコケにするということ
 フランスの政治風刺人形劇、「れ・ぎにょー・だんふぉ」のCD-ROMが発売された。しかも、パフォーマにバンドルされ、パリの年末は至る所でこのデモが流れていた。発売元は、Canal plus Multimedia。連絡先?ミニテルで調べて下さい。

 その後、数カ月遅れてPC版も発売され、もう駅のキオスクでもデモがかかるようになった。しかもシャンゼリゼのヴァージン・メガストールの真ん中に平積み。

町中で見つけた「ぎにょる」たち

ついにPC版の「ぎにょる」も発売になった。途端にリヨン駅の売店でまで売りはじめた(写真右)。

「ぎにょる」の表紙を飾るのはPPDAだ。
 フランス人は政治の話が好きらしい。どのくらい好きかというと、日本人が仕事の話をするのと同じくらい好きだと思う。だいたい、そうでもなければこんなソフトは出てこない。

 "Les Guignol d'Info"はフランスの人気政治風刺番組を元にしたゲームで、パフォーマ・シリーズにバンドルされており、マックの年末商戦の目玉だ。嬉しいことに、今のところマック版しかない。「ぎにょる」はそもそも操り人形のことだが、ゴムのような素材でできた奇妙にデフォルメされた人形達は、CANAL+の夜八時、看板時間帯のニュースをしょって立つ連中だ。アンカーマンを務めるPPDAはなんと実際にTF1の夜八時のニュースのアンカーマン、Patrik Poivre D'Arvorのパロディで、この番組と彼の権威は広く知られるところ。

 この番組の影響力はたいしたものだ。例の昨年末のストの参加者達は"Juppethon"と書いたプラカードを掲げて行進していたが、これはこの番組から出た言葉だし、シラクやPPDAそのほか多くの「ぎにょる」の声を一手に引き受ける声優がいろいろな番組にゲストとして呼ばれ、その声を披露して喝采を受けていることからも人気のほどが分かろうと言うもの。彼は栗田寛一の正確さとコロッケのデフォルメの才能を兼ね備えており、おまけに顔がいい。

 さて、この人気番組をCD-ROM化したのが今回紹介するタイトルだ。プレイヤーはPPDAからアンカーマンの座を奪うことを目標にする。まず、「あなたはジャーナリストであるが、PPDAを蹴落とす野心しか持っていない」という設定がすごい。はっきりしすぎ(ほめているのだよ)。そしていろいろな有名人を取材して、よりよい取材テープを作ってくるのだ。取材テープの人気度と信頼性で勝負は決まる。

 でもカメラのバッテリーはすぐ切れるし、取材相手にはなかなか会えないし、やっとのことで取材テープをつくれても、PPDAの人気と信頼性双方をしのぐことはまず出来ない(余談だがこの原稿が遅れた理由はここにあるのだ、宮本。もうゲームのレビューはすまいぞ)。

 てなわけで全然クリアできていないのだが、やっぱりすごく楽しい。取材相手がそれぞれクセ者だから。一番笑ったのは実はミッテランの取材で、エジプトのピラミッドの秘密の通路のようなところを突破していかなければならないため、実は私はまだ彼に会えていないのだが、これが実に神秘的な権力(ちょっとちがうか)を誇ったミッテランらしい。このほか、社会党の党首、ジョスパンはあくまでもお人好しの間抜け扱いだし、シラクも「職業;連続爆弾犯、趣味;フランス共和国大統領」である。

 もちろんニュース番組だから政治家だけが相手ではない。たとえば、サッカー選手ではジャン・ピエール・パパンやエリック・カントナにも取材に行く。ただ、パパンの「名言」は「いつか私は世界チャンピオンになるのだ」(アメリカのワールド・カップには予選落ちで出られませんでしたね)だし、カントナは「僕はゴッホとランボーとBicのひげそりが好きだ(ただしオレンジのやつ)」(オレンジのBicとは使い捨てのプラスチックですね)で、彼への言葉として紹介されているのは、「冷静になるんだ、エリック!おちつけ!」だ。まあ、しかし馬鹿にしつつもフランス人が彼らを愛しているのは疑うべくもないだろう。

 それにしても、これ、今の日本にも欲しいね。政党を分裂させまくって連立政権を作ってみたりしてもかなり面白いゲームが出来そう。結構キャラクター揃ってると思うし。田中、竹下、金丸、小沢は言うにおよばず、「とんちゃん」とか、土井衆議院議長とか、「殿」細川とか。さらに、いっそ長島監督からラモス、貴の花、野茂まで遠慮抜きで馬鹿にしきれたらものすごいタイトルがつくれると思うよ。(了)