ムルロア・マック

Macのシェアが10%のフランスで、実はフランス軍が大口の顧客であることをレポート。複雑な仏米関係に絡めてまとめてみました。今回訪ねた軍学校、polytechnique(ポリテク)はフランス革命以来の伝統を誇ります。ここにはジュークボックスもあったりするのですが、気のせいかジャンルがヘヴィメタに偏っている気がします...。
 仏米関係というのはなんだか女心である。追えば逃げ、逃げればすがる秋の空(もう春?)。

 たしかに昔、アメリカ独立の時はフランスもちょこっと手伝いに行ったし、欧州統合の父、ジャン・モネはフランス人だが、マーシャル・プランで出してもらったドルでフランスの戦後復興を成し遂げてしまったことでも知られている。

 ただ、最近ではド・ゴール、ミッテランと「とりあえずアメリカに逆らってみました」なフランス。いまだにNATOの軍事部門からは脱退したままだ。

 じゃどん、電脳ならメリケンじゃなかと?フランスはコンピューターをコンピューターと呼ばない(ordinatuer:オーディナトュールと呼ぶ)世界でも希有の国ではあるけれど。

 で、フランスでMac。フランスでのMacのシェアは10%。しかし、中にはMacの強力な縄張りが存在する。なんと、それはフランス軍の学校だ。ここでは90%Macで、優劣は完全に逆転し、学内のネットワークはAppleTalkという徹底ぶり。さて、これは一体どういうことか、私の友達でヒゲも濃いけど情も濃いここの3年生、ジョルジュのところに遊びに行ってきた。

 ジョルジュが通うエコール・ポリテクニーク(理工科学校)、略してポリテク、さらに略してX(イクス)と呼ばれるこの学校は、フランス革命で創設された軍の学校だ。よって歴史は200年。3年の内、最初の1年はセルヴィス・ミリテール(軍務)に就き、その後2年間全寮制の学生生活を送る。一学年は400人ほどで、入学時にはコンピュータ・プログラミング(Pascal)の試験もある。選び抜かれた精鋭の中から卒業時さらに150人ほどが選抜され、将校やとびきり上級の官僚となる。

 小林(以下DI)「なんでMac?」

 ジョルジュ(以下G)「安かったから。入学すると、パソコンを買わなきゃいけないんだ。MacかPCかどっちかなんだけど、機種が指定されていて、PCのときはZenithっていうフランス製。これが9000フラン、Macが7000フランだから、みんなMacを買うんだ。」

 DI「最近は何にMac使ってる?」

 G「通信とワープロ(traitement de text)だね。Macを使うのは一日一時間半くらい。去年まではコンピュータの授業の時に使ってたけど、今年はそれも終わっちゃったし。」

 ジョルジュが使っているソフトは、主にMicrosoftWordとクラリス・ワークス。クラリスは買ったときについてきたし、Wordは学校のホストにあった。彼が住んでいるのは学校の敷地内だから、ホストにあるソフトを持ってきて使っていても構わない。デジタル時代にも全寮制の良さってこんなところにあったんだ。

 DI「ところで、ここの学生がMacを使っているって言うことは、フランス軍にもMacを使っている士官が多いってこと?」

 G「そうだね。」

 DI「じゃあ、もしかしてムルロアも?」

 G「確率高いね。」

 折しも、核実験へのアメリカの技術支援の噂や、シラク大統領が実験結果をアメリカに供与したことが示唆されるなどしている。よーするに「焼けぼっくい」っつーことでしょうか?深い。

 それにしても、フランス製PCにこだわるばかりに学生がMacを使ってたりするあたり、なんだかやっぱり複雑な仏米関係である。(でも実はZenithもHPのOEM化が決まっちゃってメリケンになるので、だいたい安心でしょう。)(なにがじゃー。)(了)