(わっちゅーWhat do you)わなどぅー?[*1]

パリでこの5、6月最大のニュースは、地元サッカーチームPSG(パリ・サンジェルマン)のカップ・ウィナーズ・カップ[*2]優勝だろう。勝利を決めた日とその翌日、シャンゼリゼは暴徒の歩行者天国と化した(写真1)。今はEURO96というナショナル・チームの大会が始まったところで、フランス代表は目下連続無敗記録を更新中。EURO96の予選リーグを終わって、記録は26に。ああ、クラブ・チームであの騒ぎなら国代表が優勝したりしたら……。

鶏頭(となるも午後はお昼寝)


 いじましい。誠にいじましい。ごまめの歯ぎしりというか、ニワトリ[*3]の3文キックというか、ともかくそんな感じである。フランスの国営電話会社、フランス・テレコムが遂にインターネット接続サービスに乗り出した。
 昨年10月に行われた閣議決定中、幾つかの条項の中にひっそりと息づいていた第5条。すなわち、すべてのフランス人が「魅力的な料金(cout attractif)で、国土のいかなる場所においても(homogene sur lユensemble du territoire)インターネットへのアクセスが確保されるための措置」を政府の目標に設定したことによりフランス・テレコムが全国で市内通話料金によるサービスを提供することが決定された。
 そしてこの5月から実際にWanadooというサービスが始まった。36.01ではじまる8ケタの番号でフランス本土のあらゆる場所から共通料金でアクセスできる。通信速度は、もちろん28.8kbpsまでカバーする。
 契約はFormule1とFormule2の2タイプがある。契約料190フラン(3800円)は共通だが、月間の利用時間と料金がそれぞれ3時間55フラン(1100円)と15時間110フラン(2200円)だ。延長料金はどちらも19フラン(380円)。2000年にはフランスのインターネット接続の25〜30%をフランス・テレコムが占めるだろうと言われている。
 では、これだけ期待されているWanadooの意義は? フランスのコンピューター雑誌、インターネット雑誌各誌を分析すると、今回のフランス・テレコムのプロバイダー事業参入あるいはWanadooというものの注目点は3つ。フランス全土におけるアクセス、ミニテルとの継ぎ目のないサービスの展開、ギャルリー(仏語:デパート、商店街)を持ち込んだこと。
 担当大臣、フランソワ・フィロンの発言を幾つか読むと、彼が強調するのは英語が共通語になってしまっているインターネットの世界に何とかフランス語を持ち込むのだ、という点。上記の閣議決定の文書を読むとなんだか社会党政権の政策みたいだったけど、こっちならRPR(現在の与党、ド・ゴール派。右翼)の政策として素直に聞ける。うーん。
 個人的に触ってみた感想は、過当競争を強いられて不安定になりがちな民間プロバイダーに比べて割と安定している。京都市やインドネシアの公共プロバイダーの利用者から、公共ネットはユーザー・サポートが貧弱と聞いていたが、Wanadooの場合ミニテルでFAQ[*4]の検索も出来るからひと味違う。そして電子メールを含むインターネット環境をWanadooのウェブから垣根無しに利用できる設計は初心者にはありがたい。Wanadooと契約すると、自動的にWanadooのウェブに個人のホーム・ページが与えられる。ホーム・ページには郵便受けのアイコンがあって、クリックすると電子メールソフトが起動する。ミニテルのアイコンも用意されている。まさにすべてがウェブを起点にして繋がっているのだ。
 秋にはミニテルのWWW移行がなされると言う。現在ヘルパー・アプリケーションでエミュレーターを呼び出して行っているミニテル接続が、これまた垣根無しになるわけだ。
 はっはっは。やはりバゲット[*5]背負ったニワトリだけに、垣根は苦手なのだな。(ココーッ!)あっ。怒ってる?(コココーッ)ぱたぺぱたぺぱたぺーっ[*6]


[*1]実は、これはオリジナルのシャレのはずだった。だが、調査してみると、「Wanadooとは“I want to do”のコトである」と担当者談。しまったーっ。でもこのままで通しちゃおっと。
[*2]フランス語で言うとクープ・デ・ヴァンケー・デ・クープになっていちいち読むのがうざったいので、誰しもが英語読みするこの大会は、欧州各国のカップ戦を勝ったクラブ・チームのカップ戦。欧州三大大会の一つ。
[*3]ニワトリはフランスの象徴。フランス革命で闘争心の象徴として旗印に採用されてからだという。しかしニワトリニワトリって言ってますけど、世界5大電話会社の一つとして注目してまっせ。ほんと。
[*4]フランス語でもFAQ。ただし、Foire aux Questions(質問の広場)。
[*5]フランス以外の国でフランスパンと呼ばれているあの長いパンはフランスではバゲット(baguette)と呼ぶ。
[*6]=Pas tapez「ぶたないでーっ」頭を抱えながら唱えると効果的。