超特急

フランスのバンドで気になるのは、やっぱりリタ・ミツコ、ネグレス・ヴェールあたりなんですけど、最近特に「ひっかかる」バンドとしてビッグ・ソウルをあげておきたい。どう「ひっかかる」かというと、ギターが井手らっきょにそっくりなんです。芸風も同じ。脱がないけどね。なんでおフランスで井手らっきょなんだ。あー、ひっかかる。

エグぜく恥部の仕事場

 PowerBookの旅人な私である。この3月にオックスフォード、ロンドン、ブリュッセルと、共に移動しながら仕事してきたPowerBook Duo270cだが、最近どうも電池が弱くなってきた。購入してからもう3年目になる私のDuoは、人間の1年をコンピューターの20年と見るガイ・カワサキ風(たしか)コンピューター年齢によれば還暦だ。つまり干支がネズミウサギウマトリどしなのである。こうすれば3年でとりあえず年男ならぬ年パソコンになる。細かいつっこみは禁止する。要はバニーの格好をしたミッキーがくっついたペガサスだと思っていただければよい。他の年は、ウシドラゴンヒツジイヌ、トラヘビサルイノシシであるが、これのこじつけを考えるのは面倒なので読者に任せたい。
 思えば夕立で洗濯物ダッシュしたらコードにけつまづいてDuoを身投げさせたり(20万の液晶が割れた)、酔っぱらって通信しようとしたらなぜかモデムが壊れたりしたが(Powerportに載せかえた)、使い込んだことによる支障というのも出始めるトシなのだなあ。しかし、還暦前で「くたびれた」話をしていると、現に50代の父が先回りしてぷりぷりしたりするので、これ以上の愚痴は禁物である。
 で、忙しくて予備の電池はまだ買っていない。しかし長距離出張はある。どうするかというと、常に電源を確保するのである。欧州において長距離の移動はほぼ国境を越える。しかし、コンセントのことを気にする必要はない。大陸欧州型丸棒2本のプラグがあれば、なんとかなる。大陸欧州型プラグは本来イギリスをカバーしていないが、実はイギリスでもこれが使えないわけではない。イギリスでもシェーバー用のコンセントだけは大陸型丸棒2本なのだ。
 パリからの長距離移動は、なんといってもTGVファミリーのお世話になる。ジュネーブまで3時間40分、ロンドンまで4時間、ブリュッセルまで2時間だ。もちろん各座席にコンセントが着いたりしているわけではないが、TGVにもコンセントはある。
 そうだ。「クサイところ」にある。ヒゲ剃り用が。
 よって、「クサイところ」でDuoを使い倒すことになる(写真2)。便所にこもっていれば、検札は来ないし個室だし、いいことずくめである(うそつけーっ)。かつて人間の咳のスピードは新幹線並みだと教わったことがある。つまりTGV並みでもある。「咳をしてもひとり」という山頭火の句もある。 しかもこの山頭火の小部屋には100Vと220V両方がきちんと用意してあったりして(写真3)、私はときどきここで生まれてきたのではないかとさえ思う(思わん思わん)。しかし、あまりこもっていると本当に緊急の用がある方にご迷惑であって、ここはマナーとして充電が完了したらスマートに笑顔で席を譲りたい。きっと相手はひきつった笑顔(激症)を返してくれる。
 先に述べたようにイギリスにおいてもヒゲ剃り用コンセントは大陸型であるから、イギリスの特急電車の個室にもこの大陸欧州型コンセントがあるのである。普段、角棒3本しかもヒューズつきという、げに恐ろしいプラグ(写真4)を使っているイギリスにあって、電源関係では最も国際化が進んでいる場所が特急の個室である。イギリス人は慎み深いので、大陸の個室にもまして「あとに続く方々」への配慮が必要である。充電率95%をもって席をお譲りすれば、だいたい安心である。日英同盟以来のパートナーシップをここで損なってはいけない。
 私はこの個室を「世界一狭い仕事場(の一つ)」と呼んでいる。実際、ここで書いたレポートや原稿も幾つかある。「時速300kmの男の仕事場」。それはF1レーサー並みだ。あなたも今、音速の貴公子(しかも半ケツ)。